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有限会社オフィス山本
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誠実は、取るに足らない当たり前?

 中東の文化に精通していて、中東に関する本を数冊出版している同僚とある研修でお会いしたときのことです。彼女は、数十年前にご主人の仕事の関係で中東に長いこと住んだ経験を持っています。彼女が住んでいた当時、ラジオから突然に聞こえてきたのが「日本から学ぼう」的な番組だったと言います。それは15分ぐらいの短いもので日本人がやたら誉められ、私たちが聞くとちょっぴり気恥ずかしくなるようなものだったそうです。日本人の感覚としては当たり前としていることが、とてもすごいことのように取り上げられていたそうです。

 たとえば、「日本人は挨拶ができる(からすごい、私たちも見習おう)」、「教室の掃除を生徒がする(からすごい、見習おう)」、などなど。

 ところで、私が20代後半の頃になりますが、サンフランシスコ州立大学卒業をし、カリフォルニアに設立されたばかりのトヨタ自動車とゼネラルモータースの合弁会社で働き始めた時、驚きかつ感動したことがありました。

 私はその合弁会社の人事部に配属され、その主な仕事の内容は、日本のトヨタ自動車からアメリカへ出張や駐在者としてやって来た人たちへ、アメリカでの生活や仕事がスムーズに進むように段取りをとるなど諸々のお手伝いをすることでした。延べ2000人以上の駐在者、出張者と仕事でご一緒しました。

 このお付き合いで実感したことは、ほとんど全ての日本人の人たちは大層「誠実で正直」だということでした。日本にいたときは、日本人のこうした誠実さや正直さをほとんど意識もせず、当たり前のこととして見過ごしていました。しかし、アメリカ人やアメリカに住んでいる外国人の人たちとのつきあいを通し色んな人たちに出会う経験を経て気づいたことは、こうした日本人の誠実さや正直さは人間が一様に持ち合わせているものではなく、日本人の特徴の一つだということです。そしてこれは日本人の持つ長所、無くしたくない長所ではないかと思い始めました。「そうなんだ、これってすごいことなんだ!」と心底実感したことを思い出しました。

 しかし、昨今の日本での出来事を見渡すと、日本人もやや変わってきたのかなと首を傾げたくなりますが、まだまだ、この誠実さや正直さは多くの日本人に健在だと思いたいのです。