6月の半ば、次男の住むドイツへ行ってきました。(初めてのヨーロッパです。)ところが、私の旅のはじまりがやや悲惨というかギクシャクというか。。。
ドイツへのフライトの前日、フライトの変更の知らせが突如入りました。その結果、半日以上のオーバーな時間の遅れと航空会社の変更、乗り継ぎ地点の変更などが余儀なくさせられたのです。これに対して、航空会社からも旅行代理店からも何の理由の説明やましてや謝罪の言葉は一切皆無でした。むしろ、航空会社からは、無料で他の航空会社のフライトを用意したとので感謝しろと言わんばかりに連絡が入りました。これには驚き、かつ少々怒りも感じました。なんとかドイツに向けて出発はできましたが、ドイツで10日ほど過ごし、さあ、明日は日本へ帰るゾという時に、またまた旅行代理店からemailが入りました。何気なくメールを開けると、嘘みたいなしかし、本当の話しが書いてありました。地元の空港(ハノーバー、地元ではハノーファーと呼ばれる)のスタッフたちがストに突入したので、私の予約していたルフトハンザ航空のフライトがその影響を受けるかもしれない、と言うのです。
ええええええ?!また!行きといい帰りといい、どうにもスムーズに事が運ばない。行きの時は航空会社が前日に変更を知らせてくる、迷惑な事です。帰りの時は、空港スタッフの人たちのいきなりのストライキ、これはもうついて行けません。
しかし、時間が経ってより冷静に事態を考える事ができるようになると、なるほど、そう言うことなのかもしれない、と妙に一人で合点が入ったのです。つまり、自分が持つ権利を守るために自分を主張することは、ここの人にとっては当たり前であり常識なのでは無いかと考えたのです。その際に、日本人が持ちがちな「迷惑をかける」と言う発想は一般的には無いのでしょう。それは、アメリカ人ほどではないが個人主義が強いドイツ人にとっては、自分の権利を守ることはきっと最優先の一つであり、社会全体でそうした発想が守られているのではないか。。。だからたとえば、他の人がストをして自分がその被害を被っても、嫌ではあるけれど理解はできるのかもしれない、自分も同じ立場ならストをしていると言うことなのかもしれません。
一方で、わたしたち日本人の多くは、自分の権利を守りたくとも相手への迷惑がある場合はできるだけ回避しようとするのが一般的かもしれません。日本では、特に小規模の会社やお店になれば特にそうかもしれませんが、上の人がしっかりと従業員の権利を守ることを呼びかけない限り、またそれが可能なように何らかのシステムを作り上げていない限り、例えば自分の有給休暇を好きな時期にはなかなか取れないと言うことが現状だと聞きます。有給休暇を取りたいと思う自分の好きな時期は、他の同僚たちも休暇を取りたいだろう、と言う発想です。自分の好きな時では無くとも休暇がとれればまだ良いほうで、迷惑をかけてはいけないと互いに神経を配り、なかなか休暇が取れない職場も無くはないようです。これは第一に相手への迷惑を考えてしまい自分の権利を守らないケースです。日本は言われているほど極端に集団主義が高い国ではないのですが、やや集団主義に偏っていると言うことがこの例からもわかります(参考文献:「経営戦略としての異文化適応力」宮森千嘉子共著、日本能率協会マネジメントセンター出版)。
話を戻して、ドイツ人の日常での生活はどうなのでしょうか。地元の人に聞くと、ほとんどの人たちは、1年に30日間の有給休暇が提供されているようです。これはシステムとして、個人の権利が守られており、これが人々の思考にももちろん影響を与え、自分の権利は守られるべきもの、と多くのドイツの人は無意識に考えているからなのでしょう。
さて、ドイツのハノーファーの街の中心地を歩いて気がつくのは、平日の昼間から多くの人が繁華街でビールや白ワインを飲みながら友人や家族とくつろぐ光景があちこち至る所で見受けられることです。「一体、皆さん、いつ働くの?」と尋ねたいぐらいです。笑。そこで地元に住む息子が言うには、年に30日も休暇があれば、誰かが休暇をとって繁華街で楽しむとこう言う光景が日常的に発生するんじゃないの?「あ、なるほど!なんと、ゆとりのある生活だろう」と羨ましく思ったものです。大事な人たちと時間をとり楽しむその余裕、それが日常的に大事にされている彼らの生活。私もあやかるために、せめて意識だけでもゆとりを持ちたい、とドイツからの帰途についたものでした。