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有限会社オフィス山本
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日本人の長所はこれだ!

トヨタ自動車の名誉会長でいらした 豊田章一郎氏の訃報に接し、豊田さんが1980年代初期に設立に漕ぎ着けた日米の合弁会社(New United Motor Mfg. Inc)にて当時働いていた者として、心からの感謝と敬意を表したいと思います。

アメリカの大学を卒業直後、私は設立直後(1984年)の5月に同社の人事教育訓練部に配属されました。トヨタからの駐在員と出張者の方々のお世話係として、現地での生活についての案内、説明、例えば、アパートでの生活、病院への電話、などの彼らと現地の橋渡し的な仕事を担当しました。また、異文化研修や新人オリエンテーション研修などの提供をしておりました。

4年ほど同社で働き、つくづく実感したことがあります。それは、日本からやって来るトヨタの人たちの一様に持つ「正直さ、誠実さ、勤勉さ」です。私はその時点で、すでにアメリカ社会に5年ほど近く住んでおり、日本人から離れて久しくアメリカ人の気質にだいぶ馴染んでおりました。ややもすると正直でないアメリカ人、真面目でない人たち、不誠実とも思える態度の数々を見ていたのです。(日本人とは違うアメリカ人の素晴らしさも同様に実感したことをここでは詳細は触れませんが、追記します。)ですから、トヨタの人たちが持つこれらの長所にただ感嘆したのでした。実は、渡米する前はそれらの日本人の特徴は、若い私には「ちょっとつまらない、地味な、カビ臭く」さえ思えていたのです。ところが全くそうではなく、これらは素晴らしい長所だとアメリカでの5年間の生活を経て、実感できるに至りました。

そして、不安に思いました。長所と言うのは、自分が意識しないとどこかに行ってしまうのではないかと。なぜなら、相手の方がしばしばよく見えるからです。新しいものが新鮮に見えるからです。例えば、それは、昔の私のように。長年海外に住んで、日本人のこうした「誠実、正直」は稀有であり大きな利点でかつ長所でもあると私は思います。これらは、自分達の核の一つと言えるかも知れない日本人の大事な部分ではないでしょうか。

もう一つ、N U M M Iで体験した日本人の特徴を感じさせる体験を書きたいと思います。

ある時、トヨタの駐在員の家族が、お父さんの住むアメリカへやってくることになりました。彼の家族は、海外旅行ははじめてらしいのです。ところがこのお父さん、「仕事が優先、だから、空港まで家族を迎えに行かないだと言うのです。」結末は、アメリカ人の同僚や部下たちが「あなたが私たちにしっかりと教えてくれたので、仕事は私たちに任せて、空港へ迎えに行ってください」と彼を説得したと聞きました。お父さんは、重い腰を上げ、家族を空港までお迎えに行ったらしい。家族は不安で一杯だったろうと思うと、本当に良かったと思ったものでした。

これは、仕事優先で仕事仲間に迷惑をかけたくない、という思いから来ているのでしょう。周りから嫌に思われたくないと言うこともあるかもしれません。または仕事は仕事、公私混同してはいけないという律儀さかもしれません。これは一概に日本人の長所だといえるかは疑問ですが、日本人の特徴を実感させてくれた一件でした。

私の従業員目線でのこの世界的なプロジェクト、N U M M I の最大の特徴は、それに関わった我々が等しく自分達がその場に居合わせたことに対して、心からラッキーだと思え、そして今も思えっていることでしょう。私は平社員で大きな部分は何も見えていませんでしたが、日本人、アメリカ人の違いや共通点を肌で体験でき、その違いがぶつかるところの「相乗効果」を実感させてもらいました。

豊田章一郎氏の偉業の一つ、NUMMIから私が受けた恩恵は数知れない、そして恩恵を受けた人たちの数はどれほど膨大なものか。。。。

35年経った今でも、その時の従業員の方々との交流は続いています。この夏、その時の友人たち(トヨタの男性二人、アメリカ人の女性親友一人、皆共に配偶者を持つ)と一緒に熊野古道や奈良へ5泊の旅行をする予定です。